日本から輸出したり、海外から輸入したりするときは、海上輸送が一般的です。海上輸送では、荷主と船会社で海上輸送契約を結び、コンテナと呼ばれる専用の箱に貨物をつめて輸送します。輸出国で荷主(荷物を所有している人)が船会社に荷物を預けると「船荷証券(B/L)」が発行されます。輸出者は、この船荷証券を輸入者へ送付します。
輸入国側では、船会社から貨物を受け取るときに、このB/Lを差し入れると、貨物を引き取れます。(貨物の引換券) この記事では、船荷証券の概要、発行の流れ、船荷証券の危機について説明します。
船荷証券(B/L)
「輸出国側でコンテナを預けると3枚のB/Lが発行されます。発行されたB/Lを輸入国側で提出(1枚でOK)すると、コンテナを受け取れる」これが一般的なB/Lの説明です。この記事では、B/Lの基礎知識から、発行までの流れなど、B/Lに関するほとんどの知識を説明してます。
B/Lの意味
B/L(船荷証券)は、貿易でやり取りをする貨物を「証券化」し、その「処分権」を売買する書類です。=輸出国で3通発行されます。
例えば、コンテナ1本分の貨物があるとします。AさんとBさんがこれを売買するとします。このとき、銀行などで取引するためのお金を借りるとします。
Aさん「このコンテナ1本分の貨物を買いたいのでお金を貸して下さい」
銀行「わかりました。では、その処分権がBさんにあることを確認したいです。お手数ですが、Bさんと一緒に、この銀行にコンテナ1本分の貨物(実物)を持ってきてもらえますか?」
いかがでしょうか? もし、B/Lによって貨物が証券化されていないと、こんなことが起きます。そこで、B/Lを作り、貨物と書類を紐づけて「処分権」を売買しています。これがB/Lの大きな役割です。そして、貿易実務の中では、このB/Lを税関申告や貨物の受け渡しなどに利用しています。特にLC決済をするときに、B/Lの処分権を意識することが多いです。
B/Lは所有権?処分権?
ネット上の記事をみると、B/Lは所有権と記載されている情報を目にします。しかし、B/Lは所有権ではなく「処分権」を明示する物です。
B/Lの移転は、どうするの?
B/Lの移転とは「処分権」の移動を指します。下記に示す「オーダーB/L」であれば、B/Lの裏面に「裏書」をすることで処分権が移転します。
B/Lを紛失するとどうなる?
B/Lは、処分権があるため、紛失した場合は、簡易裁判所に「除権決定」を行う必要があります。この決定には、数か月ほどの日数がかかります。
- B/Lとは、貨物を証券化した書類
- 証券化とは「処分権」の明示化を意味する。
- 貿易実務では、この処分権を移転させることで貨物や書類のやりとりが行われる。
B/L(船荷証券の種類)
B/Lには、機能や性質により種類があります。一見すると、様々な物があります。しかし、一般の貿易実務では、5以降が関係すると考えていいです。なお、このB/Lの種類として考えがちなのが「マスターB/LやハウスB/L(表記例)」です。これは、種類ではなく、フォワーダーと荷主の関係性を示すものです。
- 流通ができる船荷証券とできない物
- 船積船荷証券(Shipped B/L)と受取船荷証券(Received B/L)
- 複合運送船荷証券
- チャーターパーティーB/L
- 指図式船荷証券(オーダー B/L)と記名式船荷証券(ストレートB/L)
- クリーンB/LとファウルB/L
- 通しB/L(スルーB/L)
- サレンダーB/L
1.流通ができる船荷証券とできない物
一般的なB/Lは、自由に流通ができるタイプが多いです。ただし、船荷証券には、譲渡の禁止の文言があったり、船会社の責任者の証明がなかったりする物があります。この場合の船荷証券は、流通ができません。特にアメリカにおける「記名式B/L」は、譲渡ができない物として有名です。
2.船積船荷証券(Shipped B/L)と受取船荷証券(Received B/L)
輸出時は、送る荷物をコンテナターミナルやCFSに搬入します。このときに発行されるのが「受取船荷証券」です。そこから、さらに作業を進めて、本船に貨物を積めた後、船名や船積み日などが追記(船積み証明)されると「船積船荷証券」に変化します。
3.複合運送船荷証券
陸・海・空の複合一貫輸送をするときに発行されるB/Lです。積地から揚げ地までの輸送を一括して提供する場合に発行されます。
4.チャーターパーティーB/L
プラントや巨大な設備、鉱物資源、穀物などの傭船(ようせん)を利用するときに発行されるB/Lです。
上記1~4までのB/Lは、一般的な貿易をする方は、あまり関係がない場合が多いです。他方、これから説明する5以降は、貿易実務でもよく耳にします。
5.指図式船荷証券(オーダー B/L)と記名式船荷証券(ストレートB/L)
オーダーB/LとストレートB/Lは、船積み証券の「流通性」に関係します。流通性とは、処分により売買することです。要は、売り買いが簡単にできるのか?の部分に違いがあります。
- オーダーB/Lは、流通性が高い。
- ストレートB/Lは、流通性が低い
オーダーB/L(指図式)とストレートB/L(記名式)は、B/Lの荷受け欄(コンサイニー欄)を確認するとわかります。ここに「TO ORDER OF~」や「TO ORDER」又は「To Order of Shipper」となっている物が「オーダーB/L」です。他方、特定の会社名や人の名前が入っている物を「ストレートB/L」です。
オーダーB/Lは、荷受人の欄に特定の者が指定されていないため、B/Lに裏書をすることで自由に売買ができます。流通性が高いといえます。一方、ストレートB/Lは、荷受人欄が特定されているため、流通性に乏しいです。そのため、海外子会社とのやり取りなど、関係性が高い所との間で使われるケースが多いです。
*参考情報
L/C決済で貿易代金を決済する場合は、指図式船荷証券となり、受取人欄には「TO ORDER OF ●●BANK(信用状発行銀行)」となっています。
6.クリーンB/LとファウルB/L
クリーンB/Lのクリーンとは、貨物自体の損傷・数量の過不足の有無を示します。クリーンは、貨物に梱包や数量に異常がない。ファウルは、何らかの異常があることを示します。
例えば、本来、書類上は、10個の貨物があるはずなに、9個しかない。又は、ダンボールの損傷が激しいなどです。船会社は、これらの損傷が「船の輸送に起因したこと」にされるのを嫌います。したがって、貨物を受け取ったときに何らかの異常があるときは、B/Lの余白部分に「リマーク」として付記します。
船会社の人「なんやこれ。書類と実物の個数が違うやんけ。こんなんうちのせいにされたら困るわ~悪いけど、B/Lに○○個足らへんって記載するで~」
そして、このリマークが付されたB/Lが「ファウルB/L」です。では、ファウルB/Lには、どのようなデメリットがあるのでしょうか? その答えが「L/C決済」です。L/C決済は、船積み後に書類を買い取る仕組みです。この買取のときに「ファウルB/L」がわかると、銀行は、船荷証券の買取を拒絶します。そのため、輸出者は、これを防ぐため、船会社に「L/I」を差し入れてリマークを付けないように依頼します。
7.通しB/L(スルーB/L)
通し船荷証券は、フォワーダーが各区間の運送区間を一括して請け負い、輸送サービスを提供するときに発行される書類です。特に昨今は、EPAなど「貨物の直送条件」を規定するルールを適用するとき、かつ、第三国で積み替えを前提とするときは、このスルーB/Lが要求されます。
8.サレンダーB/L
とは、輸出国で発行されたB/Lをそのまま船会社に戻したものです。輸出国側でB/Lを差し戻すため、輸入国側でのB/Lの差し入れを省ける仕組みです。これは「船荷証券の危機」ともいわれる問題と関係してきます。詳しくは、この記事の後半でもご紹介してます。
船荷証券に代わるWAY BILLとは?
近年、船の高速化や様々な乗り物を組み合わせた複合一貫輸送が多くなっているため、旧来のB/Lよりも「荷物の受け取りやすさ」を重視した証券があります。それが「WAYBILL」です。
WAYBILLとは、B/Lにあった証券性がなくなる一方、これまでよりも簡単に荷物を受け取れる仕組みです。例えるなら、国際版のヤマト運輸やゆうパックのような存在です。これらの小包は、受け取り時に受け取りサインだけで荷物を受け取れますね? これがコンテナや航空輸送にも適用されているイメージです。
WAYBILLには、次の2つがあります。海上輸送と航空輸送の2つに分類されます。基本的に海上輸送も航空輸送も名称が違うだけで仕組みやメリット、デメリットは同じです。強いて覚えるなら、航空輸送の場合は、さらにMaster AWBとHouse AWBが細かく分かれている点です。
- 海上輸送の場合=SEA WAYBILL
- 航空輸送の場合=AIR WAY BILL(AWB)
三国間貿易とB/L
近年、自由貿易や流通の多様性などから、商流と物流が伴わない三国間貿易をする場合が多くなっています。この場合、商流を仲介する者の所で「リインボイス」にしたり、スイッチB/Lにしたりすることがあります。リインボイスは、船会社がリスク上の観点から嫌がる可能性が高いです。まずは取引するフォワーダーなどにスイッチB/Lの対応はできるのか?を確認した方が良いです。
B/Lの見本、記載内容と見方
それでは、B実際のB/Lを基にして、記載項目を説明していきます。こちらがB/Lの全体図です。特定につながるような部分は、すべてボカシを入れています。
それぞれの項目を確認していきましょう!
番号 | 意味 |
1.EXPORTER | 輸出者 |
2.CONSIGNEE | 輸入者 |
3.BOOKING NUMBER | 船会社に船の予約をしたときの予約番号です。 |
4.CONSOLIDATION NUMBER | 輸出国でコンソリされていることを示します。 |
5.EXPORT REFERENCES | 輸出者の管理ナンバーです。 |
6.BILL OF LADING NUMBER | B/L(船荷証券)の番号です。 |
7.DESTINATION AGENT | 日本側代理店を示します。 |
8.PLACE OG RECEIPT BY PRE CARRIER | 輸出国における荷受け地です。後ほど説明しますが、こちらの船は積み替え船です。そのため、「PRE-CARRIER」という表現がされています。 |
9.VESSEL VOYAGE | 本船名(積み替え前の船名) |
10.FOREIGN PORT OF UNLOADING | 最終目的地 |
11.PORT OF LOADING/EXPORT | 輸出港 |
12.PLACE OG DELIVERY BY ON-CARRIER | 積み替え後の船により運ばれる港名 |
13.MARKS AND NUMBERS | 荷主の所有を表すための荷印です。これを梱包箱の外装などに記入します。 |
14.Container Number | コンテナナンバーです。 |
15.CRATE | 木枠というか、少し大きめのまとまりを表します。 |
16.FREIGHT PREPAID | 船賃は、すでに輸出国側で支払われています。対義語は、コクレクトです。 |
17.GROSS WEIGHT / MEASUREMENT | 荷物の総重量と容積を示します。 |
18.CLEAN ON BOARD | 貨物に何も傷がない状態で船積みされたことを示します。 |
B/Lから積み替え船であることもわかる
こちらのB/Lを見ると、積み替え船であることがわかります。それを以下の部分で判断できます。
実際、この貨物が大阪に到着しそうなときに発行されたアライバルノーティスには、次のように記載されていました。
貨物は、以下の図の通りに積み替えられて大阪に着いたことがわかります。このように、B/Lを見るだけで、その貨物は、どのように日本へ運ばれてくるのかを理解できます。もし、積み替え船であるときは、ダイレクト船よりかは、輸送日数が長くなると予想を立てることもできます。
以上がB/Lの中に書かれている項目の説明です。次にB/Lが発行されるまでの流れを確認しておきましょう。
船荷証券が発行されるまでの流れ
を確認していきましょう!日本国内へ貨物を輸入したり、輸出したりする場合は、税関に対して「●●を輸入します」「●●を輸出します」という申告をします。これを「通関」といいます。通関は、誰でも自由に行えますが、複雑な手続きが必要であるため、一般的には「通関業者」が代行します。
通関業者は、通関を中心として貿易に関わる全般的な作業を請け負っています。この中の一つとして「B/Lの発行に関係する船の手配」があります。ここから先は、通関業者に船の手配を含めて依頼する場合のB/L発行の流れを説明していきます。
前提条件:貴社が荷主。通関業務を業者へ依頼
B/Lの発行がされるまでの流れは、次の通りです。これらの作業は、通関業者が代行するため、実際に荷主がすることは少ないです。
- 通関業者に輸出する商品の詳細情報を伝える。
- 通関業者はシッピングインストラクションを基にB/L Instructions(旧:ドックレシート)を作成
- コンテナなどを搬入するときに、作成済のB/L Instructions(旧:ドックレシート)をCYオペレータ-に渡す。
- 受領印が押されたB/L Instructions(旧:ドックレシート)を船会社(代理店)へ
1.荷主がシッピングインストラクションを送付する。
荷主が通関業者へ依頼するときに、併せて船の手配を頼む場合は「シッピングインストラクション」を提出します。これは、船積みに必要な情報をコンパクトにまとめた書類のことです。この書類の中には「本船名、出航日、港情報、必要なコンテナ数、商品情報」などが記載されています。
2.通関業者は、シッピングインストラクションからB/L Instructions(旧:ドックレシート)を作成
通関業者は、荷主から送付されてくるシッピングインストラクションを基にして「B/L Instructions(旧:ドックレシート)」を作成します。B/L Instructions(旧:ドックレシート)は、あらかじめ船会社が作成している定型書類に必要な情報を埋め込む形で作成していきます。この書類が後のB/Lとなります。(通常はナックス処理)
3.コンテナ搬入時に「記入済のB/L Instructions(旧:ドックレシート)」をCYオペレーター渡す。
シッピングインストラクションを基にして作成したB/L Instructions(旧:ドックレシート)をCYオペレーターに渡します。CYオペレーターとは、船会社と契約をしている港湾業者のことです。この業者は港にあるコンテナを本船に積み込んだり、逆に本船にあるコンテナを港へ下ろしたりする作業を専門に行う業者です。この業者に「作成済のB/L Instructions(旧:ドックレシート)」を渡して「受領印」をもらいます。(通常はナックス処理)
4.受領印が押されたB/L Instructions(旧:ドックレシート)を船会社へ差し入れてB/L発行
受領印が押されたB/L Instructions(旧:ドックレシート)を船会社へ提出する三枚のB/Lが発行されます。
B/Lの裏書と書き方
指図式B/L(相手を指定しない発送方法)は、コンサイニーの欄が「TO ORDER」になっています。これは「BLの裏書によって貨物の所有権を移転すること」だとお伝えしました。では、B/Lの裏書とは、どのように行うのでしょうか。実は、ここだけの話し、この裏書き自体はとても簡単です。
B/Lの裏面を確認すると、運送に関するルールが英文でずら~と書かれています。(上から下まですべて埋まっているため余白等もありません。)この裏面部分のどこでもいいので貴社のサインをします。よくある裏書の方法としては、社印+手書きの署名が一般的です。サインの大きさ、形状等はすべて自由です。ただし、必ずボールペンで書きます。
先ほど述べた通り、指図式B/Lは「裏書」をすることにより、処分権が移転する仕組みになります。もし、あなたが輸出者であり、LC決済などをしていない場合は、B/Lの裏面部分にサインをしなければなりません。サインをしていないと、輸入者が貨物を受け取ることができなくなってしまいます。
サレンダーB/L(元地回収)と船荷証券の危機
B/Lには「船荷証券の危機」と呼ばれる問題があります。通常、輸出国側で発行したB/Lの原本は、輸入国側で貨物を引き取るときに使います。B/L原本は、貨物とは別の方法で輸送することが多いです。(例:EMS)これが貨物と書類の到着日の差となって現れることがあります。
近年、輸送日数が非常に短縮されたことにより、貨物が書類よりも早く到着することが多くなっています。つまり、貨物が到着しているのにB/Lの原本が届かず、中々、貨物を引き取れないことになるのですね!これが船に証券の危機と呼ばれる問題です。
船荷証券の危機への3つの対策
船荷証券の危機に対する対策は、主に以下の2つです。
サレンダーは、輸出国において発行されたB/Lをそのまま船会社に戻すことです。L/Gとは、銀行の信用状を差し入れて引き取る方法です。SWBは、海上版のウェイビルです。詳細でご確認をお願いします。
よくある疑問
その他、B/Lに関するよくある質問をご紹介します。
B/L fee DOC feeの違いとは?
同じです。フォワーダーなどにより表記方法が違います。
B/L feeと課税
B/Lは輸入許可前につき「非課税」です。輸入許可後の内国貨物に関係するD/Oは課税です。
D/OとB/Lの違いとは?
D/Oは、輸入+搬入後、いよいよ荷主が貨物を受け取るときの搬出引換券です。本来は、B/Lだけで貨物を受け取りますが、その貨物を受け取るまでの間に荷役料などは輸入者側が負担する必要があります。輸入本船到着→荷卸し→コンテナターミナルに保管→荷主がピックアップする。この本船到着から保管されるまでの費用がアライバルノーティスに記載されており、その費用を支払うことでD/Oが発行されて貨物を受け取れます。
B/L DATEの基準は?
B/L DATEとは、貨物を本船に「積み込んだ日」を指します。ただし、実務上は、必ずしもそうなっているとは言い切れず、様々な都合により、日付が前後する可能性があります。
発行手数料
DOC費の名目でアライバルに掲載されていることが多いです。手数料はフォワーダ(代理店)により様々です。下は2000円~9000円くらいの範囲です。
電子化の動き
近年は、ブロックチェーンなどにより、B/L自体も電子化の動きがあります。しかし、この時代になっても、依然、ファックスを使っている業界のため、完全に実現するのは、ほぼ不可能だと思います。ITスキルがあってもダメです。海外の先進的なビジネスモデルをマネても厳しいです。貿易業界には、業界特有の大きな障害がたくさんがあります。
B/Lの安全な輸送方法は?
B/Lを発送するときは、B/Lに裏書をした上で、両面をコピーして保管した方が良いです。その上で、カーボンなどを使い、こちらは確実に送っている記録を作ります。もちろん、配送はEMS又は、DHLなどのクーリエを使うことは常識です。
その他の輸入書類もチェック
まとめ
- B/Lとは、貨物の処分権を書類化した書類
- 所有権ではなく、処分権を規定。
- 紛失すると、非常に厄介。扱いには十分に注意すること
- 貿易業界は、このB/Lを利用して税関への申告や貨物のやり取りをしている。
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